ブログ・コラム

『強皮症』について
【強皮症の疑いがある、強皮症ではないかと心配な方へ】

〇強皮症とは
強皮症は皮膚が硬くなることを主症状とする病気です。強皮症のなかには、手足の皮膚の
硬化だけのタイプ(限局性強皮症)と、皮膚だけでなく血管や内臓にも症状がでる、全身
性強皮症(または全身性硬化症)とがあります。一般に強皮症といえば、全身性強皮症を
指します。
男女比は1:10で女性に多い病気です。幼児からお年寄りまですべての年齢の男女にみら
れますが、とくに30~50代の女性に好発します。

〇原因
この病気の原因ははっきりとはわかっていませんが、原因は一つではなく、複数の要因が
重なりあって発症すると考えられています。強皮症の方の90%以上に抗核抗体が陽性にな
ることから免疫異常が関係していると考えられています。
強皮症は遺伝病ではありませんが、病気にかかりやすいという遺伝子は一部では報告されています。
しかし、この病気は複数の要因が重なって発症すると考えられているので、遺伝子を持っ
ているからと言って全ての人がこの病気になるとは限りません。

〇症状
・皮膚症状
初期症状の半数以上の方にレイノー現象がみられます。レイノー現象とは寒冷や緊張などで一時的に血流障
害が発生し、蒼白、赤、紫など指先や足先の皮膚の色調が変化することです。
皮膚硬化は最も顕著な症状で、指先から徐々に前腕、体の中心に広がっていきます。また
指のこわばり、指が腫れぼったい、手がむくむ等の症状で気づくこともあります。血行障
害により手足に皮膚潰瘍ができることもあります。また爪上皮(甘皮)が伸び、点状の出
血が見られることがあります。皮膚の硬化により皮膚の色が全体に黒ずんだ様に色素沈着
するだけでなく、点状に色素の脱出もみられます。
顔面に硬化が出始めると、皺が少なくなり表情が乏しく仮面様の顔貌になり、口が十分に
開きにくくなります。舌の裏側のひだ(舌小帯)が白くみじかくなります。
・関節症状
肘、膝、手首、指の痛みがでることがあります。指の曲げ伸ばしができにくくなり日常生
活に影響がでる場合があります。
・内臓病変
消化器症状として胸やけ、胸のつかえ感、胃液の逆流、便秘
肺線維症の初期は無症状です。進行すると、労作時の息切れ、乾いた咳などの症状が出ま
す。肺線維症を長期間続くことによって心臓に負担がかかり、肺高血圧や心不全、不整脈
、心嚢炎を起こすことがあります。
強皮症腎と言って腎臓の血管が障害されることにより、血圧が急激に高くなったり、尿の
出が悪くなることもあります。

〇当院を受診される多くの理由
強皮症の疑いや心配のある方が当院を受診される理由で多いのは
・上記のような症状で当てはまるものが1つでもある。
・指や手などの皮膚がむくんだり、固くなってきた感じがありつっぱる。
・寒いときなどに指が白くなったり紫色になったりする。
・人間ドックや他の病院、皮膚科などで強皮症の疑いがあるといわれた
・親族に強皮症や他の膠原病、関節リウマチなどの人がいて心配
などです。

〇当院での診断
当院で強皮症を疑った場合以下のような検査を行います
・診察による皮膚状態の確認や合併症の確認:皮膚硬化、手指先端の虫喰い状瘢痕、手指
の屈曲拘縮、皮膚潰瘍、仮面用願望、爪上皮出血、レイノー現象、舌小帯の短縮等の確認
・血液検査:抗核抗体の有無と種類
・レントゲン検査:肺や心臓のレントゲン撮影
など
これによって診断された場合は内臓などの合併症があるかどうかを確認し、治療が必要な
症状や合併症があればそれぞれに応じた治療を開始していきます。
また、診断基準は満たさない場合でも、将来的になる可能性がありそうな疑わしい方に関
しては早期診断につなげるために、相談の上定期的にフォローをさせていただいています
強皮症を疑って検査を行い、似たような症状を起こす他の疾患(膠原病)が見つかること
もありますので、気になる症状があれば受診をお勧めします。

【強皮症と診断された方へ】

〇治療
現在、強皮症を完治させる治療法はなく、症状に対しての対症療法になります。
皮膚硬化:保湿や手の曲げ伸ばしなど。皮膚の循環障害には血流を良くする薬を使用する
こともあります。
消化器症状:胃薬や便秘薬、整腸剤等
肺、腎、心臓病変:症状に合ったお薬を使用します。
皮膚硬化が手や足に限局している場合は体全体に硬化が急速に進行することはあまりあり
ません。指の屈曲拘縮が進まないように曲げ伸ばしをすることも有効といわれています。
よくわかっていませんが、何年か経つと、皮膚は徐々に柔らかくなるケースも報告されて
います。すべての患者さんに当てはまるわけではありませんが、皮膚硬化は自然に良くな
ることもあります。しかし、内臓病変は重症化することがありますできるだけ早期に治
療を開始して、内臓病変の合併や進行をできるだけ抑えることが極めて重要です。
この病気の進行に関してですが、皮膚症状に関しては10-20年たっても変化のない人が半
数以上です。しかし中には何らかの検査値の異常や全身性の病変が発症する可能性もあり
、これらが出てくるかどうかに関しては予測がつきにくく、ご自身でも判断が難しいため
、早期発見、治療により重症化を防ぐため、安定している方でも2-3か月程度に1回の定期
フォローを行っています。
この病気を完治させることはできませんが、いろいろな症状を和らげることはできます。
患者の皆様がうまく病気と付き合っていけるようにSRCのメディカルスタッフ一同がそれ
ぞれの立場からお手伝いできればと考えています。病気に対する心配、生活に対する心配
など何かお困りのことがございましたら受診の上ご相談ください。

強皮症は指定難病に認定されており、国の定める基準により医療費の助成を受けることが
できます。当院では重症度に応じて強皮症の難病受給を受けるのに必要な臨床調査個人票
を記載・作成することができます

受診のご予約は電話でとることができます。強皮症の検査や診察、治療、相談などで受診
の希望される場合にはお気軽にお電話ください。

執筆者兼監修者プロフィール

上原武晃

湘南リウマチ膠原病内科

院長 上原 武晃

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