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『全身性エリテマトーデス(SLE)』について

【全身性エリテマトーデス(SLE)の疑いがある、全身性エリテマトーデス(SLE)ではないかと心配な方へ】

〇全身性エリテマトーデス(SLE)とは

全身性エリテマトーデスは「膠原病」の代表的な病気の一つです。私たちの体には、自分の体を守るために細菌やウイルスなどの外敵を攻撃する「免疫」という働きが備わっています。ところが、免疫の働きになんらかの異常をきたすと、自分自身の体の細胞や組織を攻撃してしまうことがあります。そのために様々な症状が起こるのが、「膠原病」という病気です。

その病名は全身を意味するsystemicと 皮膚にできる発疹が狼に噛まれたような赤い紅斑であることからlupus erythematosusと名付けられ、その頭文字を取ってSLEと呼ばれます。

SLEを発症する人の男女比は19であり、圧倒的に女性が多い病気です。SLEは全ての年齢で発症しますが、とくに2040歳代の発症が多くなっています。

 

〇原因

免疫の異常で症状が起こるSLEですが、なぜ免疫が異常を起こすのかははっきりとわかっていません。遺伝子が同じである一卵性の双子の場合、2人そろってSLEを発症する確率は2560%程度と報告されているため、SLEの発症には、遺伝的な要因も関与すると考えられています。ただし、これが100%の確率ではないことから、遺伝的な要因だけでなく環境など何らかの要因も発症に関与している可能性があるとみられています。海水浴やスキーなどで日光(紫外線)に長時間さらされることやウイルス・細菌などの感染症、妊娠・出産、特定の薬剤の使用、ケガや外科手術、女性ホルモンなども発症の引き金になると考えられています。

 

〇症状

SLEでは発熱や倦怠感のほかに皮膚炎や関節炎など全身に様々な症状が現れます。症状は個人差が大きく、症状の組み合わせ、現れる時期、強さは人によって異なります。

一方、皮膚だけに症状が現れている場合は、皮膚エリテマトーデス(CLE)と分類されます。

全身症状

発熱全身倦怠感疲れやすい食欲不振など

関節症状

手や指が腫れて痛いなどの関節炎を起こします。肘、膝などの大きな関節や手の指など、日によって場所が変わる移動性の関節炎が見られることもあります。関節リウマチのように関節破壊がみられることは通常ありません。

皮膚症状

典型的な症状は、「蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)」と呼ばれる、鼻から両頬にかけて現れる蝶のような形をした皮膚の赤み(紅斑)です。これは、蝶が羽を広げたような形をしていることから名付けられました。蝶形紅斑にかゆみや痛みはない場合が多く、皮膚を触ると少し盛り上がっていることもあります。

また、「円板状紅斑(えんばんじょうこうはん)」と呼ばれる円板状の紅斑(ディスコイド疹)も特徴的な症状です。円板状紅斑では、皮膚が厚くなり表面がカサカサしたりかさぶたのようになっていることがあります。主に顔や耳、頭部、唇にみられる症状ですが、首から下の広い範囲にもみられることがあります。

しもやけのような「凍瘡様紅斑(とうそうようこうはん)」があり、手や指、耳に赤い湿疹がみられたり、寒冷刺激により手指の色が白・紫・赤へと変化していく「レイノー現象」がみられることもあります。

このほかにも、皮膚や粘膜には様々な症状が現れる可能性があります。

日光過敏症

強い紫外線にあたった後に、皮膚に赤い発疹、水膨れ、あるいは熱が出る人がいます。このような症状は、日光過敏症といい、この病気でよく見られます。

口内炎(口腔内潰瘍)

「口腔内潰瘍(こうくうないかいよう)」と呼ばれる口内炎のような赤みや白い盛り上がりが、口の奥の上あごや頬の部分にできることもあります。口腔内潰瘍は痛みのないことが多く、自分では気づきにくい症状です。鼻やのどの粘膜にできることもあります。時に痛みを伴うこともあります。

脱毛

円形脱毛のように、部分的に髪の毛が抜けたり、全体の髪の量が減ったりすることもあります。また、髪が痛みやすく、髪の毛が途中から折れてしまう人もいます。

・臓器障害その他

特に腎臓(ループス腎炎)、神経精神症状、心病変、肺病変、消化器病変、血液異常などは生命に関わる重要な臓器に障害出ることがあります。浮腫みや息切れ動悸、頭痛、抑うつなどの症状がでます。全く臓器障害のない、軽症の人もいます。

 

〇当院を受診される多くの理由

SLEの疑いや心配のある方が当院を受診される理由で多いのは

上記のような症状で当てはまるものが1つでもある

発熱や関節痛、特徴的な紅斑ができている

人間ドックや他の病院、皮膚科などでSLEの疑いがあるといわれた

親族にSLEや他の膠原病、関節リウマチなどの人がいて心配

などです。

〇当院での診断

当院でSLEを疑った場合以下のような検査を行います

・診察による全身状態の確認や合併症の確認: 皮膚・粘膜状態、関節症状、神経症状など

・血液検査:抗核抗体の有無や種類、DNA抗体、Sm抗体、補体など

・尿検査

・レントゲン検査:肺や心臓、関節のレントゲン撮影

など

 

これによって診断された場合は内臓などの合併症があるかどうかを確認し、治療が必要な症状や合併症があればそれぞれに応じた治療を開始していきます。

また、診断基準は満たさない場合でも、将来的になる可能性がありそうな疑わしい方に関しては早期診断につなげるために、相談の上定期的にフォローをさせていただいています。

 

SLEを疑って検査を行い、似たような症状を起こす他の疾患(膠原病)が見つかることもありますので、気になる症状があれば受診をお勧めします。

 

【SLEと診断された方へ】

〇治療法

SLEでは、病気の勢い(疾患活動性)、症状や臓器障害の種類や程度、合併症など、全身の状態を考慮して治療方針が決められます。

そのため、実施する治療法、薬剤の選択とその使用量・使用方法は、個々のSLE患者さんで異なります。治療にあたっては寛解を目標に、まずは疾患活動性を落ち着かせることを目指します。加えて臓器障害をどれだけくい止めることができるのかが大きな目標の一つになります。

ステロイド剤:ステロイドは炎症や免疫反応を強力に抑える働きを持っています。軽症から重症まで幅広く用いられ、SLE治療の中心となる薬剤です。患者さんの症状や状態に応じて服用量を決定します。症状が安定していればステロイドは徐々に減らしていけます。疾患活動性が特に高い人は、通常より多い量のステロイドを点滴する「ステロイドパルス療法」という治療が行われることもあります。

免疫調整薬:免疫調整薬は、マラリアの予防と治療を目的に開発された経緯から、抗マラリア薬とも称されます。開発からほどなく、炎症を抑え、免疫を調節する働きを持っていることが明らかになり、SLEなどの様々な病気の治療薬として広く用いられてきました。欧米では50年以上前から使用され、今ではSLEの標準的な治療薬と位置づけられています。免疫調整薬は、SLEに対しては主に皮膚症状や倦怠感などの全身症状や筋肉痛や関節痛などの筋骨格系の症状などがある場合に用いられます。長期に服用することで、まれに網膜症が現れることがあるため、眼科医による定期的な検査が必要です。

免疫抑制薬:免疫抑制薬は、免疫に関係する細胞の働きを抑えることによってSLEの進行を抑えます。ただし、炎症を抑える働きは強くないため、基本的にはステロイドと併用します。重い臓器障害などで治療を強化したいが、副作用の心配からステロイドを増量できない場合などに、免疫抑制薬を追加することで治療を強化することがあります。また、ステロイドを減量したいにもかかわらず、なかなか疾患活動性が落ち着かず減量できない場合などに、免疫抑制薬を追加することによってステロイドの減量を進めることもあります。

生物学的製剤:生物から作られるタンパク質などを参考に使用される薬です。SLEに関与している物質に直接作用し、働きを抑えるお薬です。ステロイドや免疫抑制剤で治療効果が不十分だった場合に使われます。点滴と注射剤がありますが当院では主に注射剤を行っています。

 

一口にSLEと言っても病気の広がり、重症度によってその後の経過は全く異なります。

SLEは、病気の勢いが強い「活動期」と、病気の勢いが弱い「非活動期」があり、症状はよくなったり悪くなったりを繰り返し、慢性の経過をたどる病気です。。治療がうまくいけば「寛解」と呼ばれる症状のない状態となり、健康な時と変わらない日常生活を送ることができます。

そのために、適切な治療を正しく継続して病気の勢いをコントロールすると同時に、悪化や再燃を引き起こす可能性がある日光(紫外線)を浴びることやウイルス・細菌などの感染症、計画のない妊娠・出産、特定の薬剤の使用、ケガや外科手術などを避けることが大切です。

 

この病気を完治させることはできませんが、いろいろな症状を和らげることはできます。患者の皆様がうまく病気と付き合っていけるようにSRCのメディカルスタッフ一同がそれぞれの立場からお手伝いできればと考えています。病気に対する心配、生活に対する心配など何かお困りのことがございましたら受診の上ご相談ください。

 

SLEは指定難病に認定されており、国の定める基準により医療費の助成を受けることができます。当院では重症度に応じてSLEの難病受給を受けるのに必要な臨床調査個人票を記載・作成することができます

 

受診のご予約は電話でとることができます。SLEの検査や診察、治療、相談などで受診を希望される場合にはお気軽にお電話ください。

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